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復活のノベルレビュー
■ よーし、久しぶりにノベル読むぞー
2012ごろ面倒でやめたのですが、また読みたくなったので再開です。昔のレビューは全部破棄。まっさらからリスタート。


数が増えてきたので、まとめてみた。そのうち数が多くなったら五十音順にします。




●2015/02/26  → 「作品ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その13

 なんで管理人はラノベしか読まないの?と聞かれれば、一般作だってピンキリで面白いのもあれば、どうしようもないクズが溢れているのと同じで、ラノベにだってクズはあるけど、良作だってある。ジャンル散漫な一般作を探すより、ラノベのくくりの方が的を絞りやすいから。ファンタジー多いし。

『薬屋のひとりごと』A

 続巻買い。これの続きが出るとは思わなかった。待望の2巻。

 前作と同じく、中華風帝国の繁栄する時代、花街で薬屋をやっていた主人公娘(表紙)はマッドサイエンティストみたいな変わり者。現実主義者で頭がいい。毒が好きで飲んで痺れたりするのも好きな変人。

 せっかく地元の花街に戻ったのに、借金のせいでモブ芸者みたいな仕事をしていたのだけど、前作でも登場していた「宮中で随一の美男子役人」が彼女を手元においておきたいので金で買われる形となって、またも下女として宮中に舞い戻る。

 ちなみに美男子は主人公娘がかなりのお気に入りなのだけど、彼女は変わり者なので美男子だからと熱を上げるタイプじゃなくて、時には虫を見るような目で見下したりする。

 で、今回は働く場所こそ違うものの、またも事件に関わり、鋭い洞察力と並々ならない知識、時代に左右されない価値観を発揮して解へと導いていく。今回はそれらの事件が実は些細な関係性を持っている事に気づいていき、最後の大事件では彼女がいなければ死人が出ていた程。

 また、新しい登場人物として彼女の縁者が登場し、話に関わっていくのは面白い。前作を読んで楽しめた読者には、安定した続編として太鼓判を押したい。…ただ、前作ほど連続してバッサバッサと謎解決ではない事、あくまで推理モノであるため、同じことの繰り返しである要素はどうしても否めないので、大どんでん返しなど過度に期待すると良くないのかも。

 70点。続編として十分なデキであり、安定感がある。


●2015/02/26  → 「作品ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その12

 読んでないわけじゃないのですが、更新がかったるいので掲載してないだけ、という正直に申しまして実にお粗末な問題がありまして、読んだら勝手に文章になってくれる未来が待ち遠しいです。

『赫竜王(イグニス)の盟約騎士』

 ドラゴン買い。ファンタジーでドラゴン主体なら読みたいので。

 ファンタジー世界にドラゴン襲来で人類は絶滅の道をたどっている。ドラゴン討伐のための技術を学ぶ学園に集められた生徒は、戦力となるべく実戦と共に強くなろうとしている未来の戦力。
 人間側にも唯一ドラゴンに通じる武器、竜剣があり、これはドラゴンを倒して力を奪うことで強くなれるというもの。世界にはそうして強くなった6人の剣聖と呼ばれる実力者がいる。

 主人公君はその学園に志願して集まった生徒の一人だけど、目的があって相棒の少女と共にやってきた。それは学園のトップである剣聖を殺すこと。


 PSP「セブンスドラゴン」のネタにファンタジー学園、美少女を込めたという…実にラノベらしいラノベで、あくまでもアニメ的な展開と美少女らをメインに据えた作品。主人公以外は全員娘と聞けば、想像がつくだろう話。
 基本的にドラゴン自体はただの舞台装置であり、強い強い言われている割に主人公君らの俺つえーで倒せる程度。苦戦しているという設定の割りにあっさり殺せる。しかもドラゴンが日本語で『ぐぇええ!』とか叫び声なので非常に萎える。

 実質の主体部分は主人公君が学園長の剣聖を殺す事であり、人間同士の争い。なので強いドラゴンが暴れる姿に期待すると肩透かし。最強種が出てきても主人公君がワンパンとか悲しい扱い。

 また、仲間が女だけなのでラノベ展開である以上傷つけるわけにも行かず、扱いが生ぬるい。冒頭や途中でどうでもいいモブが死んだりするけど、仲間ではない、愛着も何もない人間が退場したところで、それは読者に響くものなのかと疑問。

 全体的に情景描写が抑え気味であり、だからこそ世界の重厚さがなくアニメっぽい安さを感じる。まあ、いわゆるお子様向けに書かれた作品なので、これ以上文句を言うのは筋違いかな、と。

 35点。構成的にはまずまずだけど、基本構成がありがちなタイプの俺つえーノベルで、全体的に子供っぽい。自分的には最初から最後まで全部苦痛だった。表紙にお子様ラノベって書いといて欲しい。…まあ、こういう安いラノベの方が売れる時代なのかもしれないけど。


●2015/01/12  → 「作品ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その11

 現代の異世界ファンタジーモノというのは、思ったより少なくて、元々異世界で現代っぽいのはよくある。たぶん現代を使うのは制限が多いからだろうね。都合が悪いし知識もいるし叩かれ易いし。

『ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける』@

 なんとなくの適当買い。これもWeb小説なんだそうで。知らなかった。

 金持ち系全寮制学校でいじめられっ子とされていた主人公君は、いじめ首謀者を殺そうと企むまで追い詰められていた。裏山に呼び出し、落とし穴に嵌めて殺そうとするが、実際に嵌ったのは、RPGなどのゲームで登場する豚人間モンスター、オークだった。

 学校のある山が丸々異世界に転移して、主人公君はたまたま、その異世界のモンスターを倒した。すると、ゲームのようにレベルが上昇という意味不明な現象が起こり、彼はスキルポイント振り分けで、付与魔法と召喚魔法を覚える。

 で、表紙のヒロインがオークに襲われているのを助けた事で、彼女も状況打破するために戦う事を選び、仲間として戦っていく…という流れ。学校のある山ごと転移した事で、他からの助けが得られないのがミソだわね。自分達でなんとかするしかない。

 …LVが上がると、謎の白い部屋に転移させられ、そこでLVUPで得られるスキルを振り分けたりするのだけど、タイトルでもある付与魔法も、召喚魔法も状況によって使い分けられるし戦闘は楽になる。だから、よくよく熟慮する必要がある。その辺りの設定と、魔法の設定はうまく考えてあるので強くなる過程が面白い。ただ、細か区面倒くさいといえばその通りなので、その辺りは人を選ぶと思う。醍醐味(だいごみ)ではあるんだけど。

 また、状況がけっこうえげつなくて、生徒の死体が山積みにされてたり、慰み者になったりと容赦ない。敵は都合がいい「やられ役」ではなく、ちゃんと首の皮一枚での戦いをやっている緊張感があるのはよい。

 ただ、いじめられっ子の主人公君が、ちょっぴり出来過ぎていてプチ勇者みたいな立ち位置である事や、ヒロインも吊橋効果絶大で速攻で主人公君に惚れるのが都合よすぎな気もしないでもない。まあ、主人公君しか話を引っ張れるキャラがいないから仕方がない面はあるのだけど。

 それなりの緊張感と、こつこつ強くなっていく面白さ、頼りないながらも仲間が増えていく面白さなどが部分があって、話は面白いと思うのだけど、それだけに主人公君以外が全部女の子でプチハーレム状態なのは残念。変に男向けにしなくても、十分状況で魅せられる話になっているので、女キャラに頼らず、読者を選ばない作品作りをしたほうが読者層が広くなったように思う。

 65点くらいかな。少々女キャラに頼りすぎて、小さくまとまっているのが勿体無い。そこが工夫されてればなぁと。






●2015/01/07  → 「作品ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その10

 剣と魔法のファンタジーモノというのはワタクシの基本でありまして、よさげなのがあったら即座に飛びつくのは仕方がない事なのですよ。現代学園モノなんて二の次。

『ビルドエラーの盾僧侶』@

 新作適当買い。しいて言えばネトゲRPGモノだったから。元はWeb小説。

 新作ネトゲ・クロクロオンラインは、リアル異世界に通じている他に類を見ないネトゲで、主人公君は限定一万人プレイヤーのうちの一人だったが、その異世界に通じている事の発覚で、強制捜査があったなどの経緯がある。

 現在はその参加プレイヤーの同世代がひとつのクラスに集められ、国の監視指導の下でクロクロ世界の攻略育成のカリキュラムを受けている。

 で、主人公君はキャラメイキングに失敗し、戦士での盾職をやろうと思ったら、なぜか僧侶にされて、能力振り分けが体力バカになったため、回復魔法もマトモに使えないというキャラでスタートするはめになった。(キャラ作り直し不可)

 この作品は、そうした世界での冒険を描いたもの。

 まず初めに、これを書籍化したのは失敗以外の何者でもないという事。元々がWeb小説のせいか、設定がガバガバで情景描写や詳細、具体性がまるでない。モンスターで「イフリート」というのが出て来ても、HPバーが9本ある強敵とか地下90階のボスとかしかなく、炎が燃え盛るだとか、出現と共に周囲の気温が急激に上がるとか、見た目そのものの描写がない。身長3メートルくらいか。

 体液を飛ばす「ビッグフロッグ」なんか色すら描写されてない。「ゴブリン」なんて小鬼型モンスターという一言だけで、どう小鬼っぽいとか、装備すら書いてない。別に物凄く書けとかじゃなく、そうね…、「禿頭のてっぺんに小さな角を持った全身緑色の人型生物、子供大のそれは刃こぼれをした包丁を持ち、赤い目に殺意を宿しながら奇声を上げて躍りかかって来た!」…とかでも十分なのに、それすらない。

 また、スキル使用時の描写などもなく、技は名前からどんな技かを推測させるだけ。「ソニックパンチ」とかあっても、どういうタイミングで、どういう衝撃だとか高速だとかの具体性が一切ない。ファイヤーボールという魔法も、ただ使ったというだけでダメージを与える程度で、大きさとか、着弾の勢いとか描写が無い。同様に、場所自体にも情景描写がなく、墓場とか村とかまったく語る気がない。別に難しく書けって言っているのではなく、せめて最小限でも分かるように書いておけという事。

 加えて、よくある「個人に一つの特殊能力」があり、登場人物はみんな持っているのですが、それ自体が何なのかの記載がなく、しかも異世界のキャラででも使えるとか、一切経緯が語られてなく、物語にもほぼ関わりがない。(無くても構わない話に仕上がっている)

 …そういうわけで本作は、あくまで薄く浅くを貫き、会話主体で読みやすいだけを主眼においている。

 でも、それはWeb小説だから通用する手法であり、一冊の書籍となった場合はただの不親切極まりない文章が露呈するだけで、ストレスしか貯まらない結果を生む。また、必要なときに必要な情報を与えてくれず、後になって少しだけ説明して納得しきれないまま先に進んでしまうのはWeb小説であっても納得できない不親切でしかない。

 Web小説でなら、細かいことを気にしなくても良かったのだろうけど、一冊の本、物語として成り立つ書籍では、そんな子供騙しは通用しない。もしその低レベルが許されるなら、世間の読み物はもっとそういう作品が増えているはず。普及していないという事は否定されているという事。

 また、ガバガバ設定をさらに語るなら、リアルで痛覚や感覚を伴う異世界という設定なのに、描写が皆無というのは、どんだけ自虐なのかと思うし、そういう世界に育成と探索目的とはいえ少年少女を行かせるというのは教育上間違いなくマイナスなんじゃなかろうか。人手が足りないだけで未知だらけの世界に子供らを送り込むとか狂ってる。
 だって、冒頭に出てくる小学生とか、そんな生死を分かつ体験がトラウマにでもなったらと思うと親が行かせるはずがないでしょうに。キャラが死んだら二度とログインできないくらいって制限はあるけど、それより人格形成もままならない世界に子供を行かせる理由には足りない。しかも限定一万人での開始で、強制捜査以後、再開に半年しか経過してないのに集められたクラスメイトが同年代だけで2クラス揃うとか、そんなに都合よく同年代が集まるわけないじゃない? ガバガバも程ほどにするべき。

 評点、論外。せめてまともな文章と設定での物語を読みたいと思う。630円と頭ひねらせて理解しようと努力した時間を返せ。






●2015/01/03  → 「作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その9

 たまにはアクションモノでもいいかなぁと、新作を適当に選んでみるのですが、世の中というのはままならないもので、まさかアクションの皮をかぶったああいうものだとは…。

『炎獄のアルシャーナ』

 新作適当買い。アクション系が読みたかった。中世風ファンタジー、剣のみ魔法なし。剣闘士モノ。

 主人公君は旅人だったのだけど、運悪く犯罪者扱いを受け、闘技場へと送られる。そこに現れた対戦相手がヒロイン(表紙)三年無敗のチャンピオンで、技も素質もズバ抜けている。

 元々、戦う気もなかった主人公君は即座に降参、勝者の権利によりヒロインの雇い主の豪邸へと誘われ厄介になる事になる。その中で、ヒロインが闘技場で勝利するためだけに育てられ生きていることを知り、外の世界を知らない籠(かご)の鳥のままでいいのかと疑問を抱く。

 で、ヒロインの雇い主と敵対関係にある都市の総督…、いわゆる悪市長がヒドイ奴で、自分の剣闘士を娯楽の道具としてしか扱わず、ヒロインに負ければ処分するという慈悲の欠片もない奴。で、ヒロインも悪市長の策略で負けてしまうのだけど、自分の雇い主も、彼女を商品としてしか扱ってなかったと知り、主人公君が言っていた外の世界への旅立ちのために反旗を翻す…という話。

 ……ヒロインは剣闘士としての誇りを持っていて、戦う事に不満を抱いてない。悪市長側の剣闘士も戦い自体というより、悪市長の扱いが悪いことに怒っている。ヒロインなんて町に出れば大人気でファンまでいる事に喜びすら感じている。

 雇い主の待遇が悪いことには怒っているが、剣闘士というものが嫌なわけではない。現状の扱いに不満を抱いて反抗活動を行う。…それ、ただの労働組合のストライキじゃん。

 で、主人公君は自分の主観である「外の世界を知らない籠(かご)の鳥は不幸」という身勝手を、世間知らずのヒロインに刷り込む。籠の中の鳥がまるで幸せじゃないって事なのか。外敵が一切いない安全な住居と、飢える事のない食事を与えられ、ある程度のわがままも通る生活が幸せじゃないと? 実際に町を歩いて生活に困窮している貧民街を歩いてもそういう言葉がでてくると。

 剣闘士という奴隷でありながら、相応の身勝手が許される。でも、勝利という結果を得られなければ代償を払うのは当然なわけで、それが奴隷の立場なんじゃね? だって現代じゃないんだから。そういう家畜認定された人間が許容されている世界ならその法則に従うしかない。自由への渇望を描くためにノベルとして書かれたのだとしても、じゃあそれをひっくり返すだけの説得力を文章に組み込むべきだったと思う。

 で、一番ひどいのが終盤の剣闘士反乱。これは主人公君が画策したものなんだけど、仮に悪市長を討ち取って街から逃げ出しても、反乱分子がより大きな力に駆逐されるのは時間の問題なわけで、ヒロインには主人公君という旅慣れて世間も知っている男がいるから逃げ切れるだろうけど、それ以外の剣闘士にはそういう助けもないのだから、当然ながら処分されるでしょ。それが理解できない程、主人公君は頭は悪くない。つまり、彼はそれを理解してながらヒロインを開放するために他の剣闘士を捨て駒にしてるのよね。悪意はなくても現実はそう。それは非道以外の何者でもないんじゃないの?

 加えて、ヒロインと悪市長側の剣闘士以外の剣闘士さんらも反乱に加わってくれているけど、彼らがどういう苦労をしているかの描写がないので反乱の賛同には疑問が残る。街で賞賛されているヒロインがいる事、闘技場の客入りが常に満席である事を鑑みれば、剣闘士が市民からは称えられているものだと捉えられるので、余計に彼らが反乱に乗り出す意味を読み取れない。

 …うん、まあ。

 読んでいれば若年層向けである事はわかるけど…、あまりにも主人公君が身勝手で、ヒロインも流されすぎてて、これってどうなの?と首をひねるしかなかった。いくらなんでも穴だらけじゃないのか? もう少し考えるべきじゃなかったのか。

 戦闘描写もヒロインが勝つのが分かってるから盛り上がらない。そもそも、ライトノベルとしてヒロインを傷つけられるわけない、だから戦闘もたかが知れている。事実その通りの内容だった。…そういう制約を跳ね除けて面白く書こうという意欲も感じない。自由への代償に腕一本くらい落ちれば面白くなったのに。

 そんなわけで評点は30点。読みやすいだけ。でも、穴だらけでツッコミまくりで面白かったかも。






●2014/12/31  → 「作品ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その8

 元々は「小説家になろう」の作品だそうで、それを文庫化、好評だったのか再文庫化したという異例の作品だそうで。LINKより原版が読めます。逆にヒーロー文庫に専門ページがない(;;

『薬屋のひとりごと』

 新作適当買い。中世、中華ファンタジー世界での宮中のお話。元々は薬屋だった主人公(表紙)は、不幸にも拉致られて売られ、皇帝の妻らが暮らす後宮の下働きをしている身だった。

 当然ながら不満だが出られるわけでもないので仕方なく働いていたら、帝の御子(赤子)らが相次いで命を落とすという奇妙な病気が蔓延していると知る。薬屋のため、その原因を知っていた彼女は、自分の正体が分からないように(知られても面倒なので)助言を書置きするのだが…、という始まり。

 結局バレて、それ以後、メインとなる「宮中で起こる様々な難題に挑む」事になるのだけど、具体的にどういう問題があるかというと、

 奇妙な色の炎が舞い上がった! 呪いだ! → 花火と同じで色がついただけ
 奥様が原因不明の衰弱 → ”おしろい”が毒じゃね? 塗るのやめればおk
 夢遊病患者を治せ → 薬じゃ精神病は治せないんで。しかも、あれは演技じゃね?

 主人公さんはクールで知識が豊富な現実主義者なもので、非科学的なモノを知識で説明できてしまうし、冷静で他人の言葉に流されない。しかも、マッドサイエンティスト的な発想で、毒飲んで痺れてもいい毒だ、などと喜んだりする。ようするに知的な変人。

 本編である事件そのものも興味深いのだけど、一番は彼女のそういう図太い性格を読むのが楽しいといったもので、ひとつの骨太な推理モノではなく、色々な問題を解決しまくる、まさに痛快ミステリーといった具合。まあ、「小説家になろう」サイトで読めるから、書評を見るより読むほうが早いと思う。非常にい面白い作品。

 また、中華風の世界という、あまりこういうノベルでは見ない世界観に躊躇(ちゅうちょ)する方もいるかもしれないけど、国名とか出てこないし、だいたいの雰囲気だけ分かれば問題ないです。三国志とかまったくダメで、拒否反応すらあるワタクシが言うのだから間違いない。

 うん、80点かな。タダでも読めるとはいえ、買ったことに後悔はないです。






●2014/12/18  → 「星海社FICTION・作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その7

 今回の復帰は長く続きそうな気がする。地雷を踏まないように、テンションをどん底まで下げきらないように、時間とメンタルに優しい姿勢で読むことにしてますので。

『アリス・エクス・マキナ02 囚獄のトロンプルイユ』

 続編買い。1巻が面白すぎて速攻で2巻を買った。

 高性能アンドロイド・通称アリスが世界で爆発的ヒットとなり、高価にも関わらず購入者が続出。そういった彼女らに関わる物語の2巻。舞台はそれより一年後。1巻で行方不明になったアリスはまだ見つかっていない。
 物語の視点は代わり、主人公は探偵見習いの青年。1巻とは違うアリスの捜索依頼が舞い込んできたので、その捜査をするというもの。

 主人公君が探しているアリスがとある屋敷にいるのではないかと潜入したところ、そこにも別のアリスを探す女の子(この子もアリス)が潜入しており、協力して屋敷を探索し、真実に向かうという流れ。表紙右が主人公君のように潜入してた幼女。左が主人公君が探している子。探す対象は違うのだけど、その子らは容姿がそっくりなのでお互い無関係ではなかろうと協力している。

 で、バイトとして雇われているアリスの幼女とは違い、不法侵入をしているため夜間しか行動できない見習い主人公君。夜中に幼女と一緒に捜索するけど、お屋敷勤めのアリスに見つかったりするなどハプニングがある。そうした中でたどり着いた真相とは…?という流れ。

 はっきり言う。……これ失敗作だわ。

 たぶん今後のための土台作りをしたかったようなんだけど、無理に出した1巻キャラ再登場に意味がなく、また幼女の正体というミスリードも意味がない。無理に正体を歪ませただけにしか見えない。誰だよそれ、みたいな印象。完全なモブキャラをメインに引き上げちゃった的な発想で、そもそものドラマがないから正体が陳腐。

 また、主人公君が屋敷に潜入してからは捜査をする意味合いがなく、夜間行動でのハプニングに面白味がない。せめて中盤で切り上げるべきだった。終盤は最悪で、タネ明かしも無理矢理。中盤での屋敷主人の夜の行動が気持ち悪いだけに、終盤の態度は愚かしいミスリードにしか見えない。

 ど う し て こ う な っ た 。 …どうしてこんな状態で世に出したんだ? 編集もなぜこんな惨状でGOを出したんだ?

 1巻のデキが良すぎたのはある。間違いなく良作だと思う。だからこそ酷いと言い切る。十分に話を練り上げる時間も貰えなかったかのような完成度。これは酷いや。1巻は切なくて泣いたけど、この2巻は悔しくて涙出てくる。

 甘くつけても40点。1巻と比べるまでもなく駄作。…3巻、だめかもなぁ…。






●2014/12/04  → 「オーバーラップ文庫・作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その6

 戦記モノ、というのはノベルでは特殊でして、他と比べられるものでして、あれより良かった、あれよりイマイチだな、とか語られるのが運命。だからこれも例外なく比べさせていただきました。

『セントレイン戦記 七戦姫と禁忌の魔剣士』

 新作適当買い。なんでも良かった。

 剣と魔法のファンタジー戦記モノ。魔法比率は少なめ。題名でもあるセントレイン王国は9つの州に分かれており、主人公君(表紙右隅)はそこの太守。弱小の北境の地。

 300年前に妖魔と戦ったことで団結し国となったけど、いまはもう各州が覇権を巡って対立し始めている。そんなご時勢に、王国の姫君(表紙)が主人公君の州へ転がり込んでくる。もう戦争になるから、あなたの力を貸してちょうだい、と。
 …で、自分にはその気はなくても、隣国は覇権を握るために交戦を望んでいる。攻められるなら立たねばなるまいという流れで戦争になる。話的に硬くなく重くない、まさしくライトノベル。

 情勢は分かりやすい。けど、今回は関係ないとはいえ、妖魔に対する説明が特になく、どれだけの脅威で警戒しなきゃいけないのかが浅い。また、主人公も姫様も能力開放でまさに無双化して多数を一気になぎ払えるのだけど、インパクトが弱い。反応速度があがるとか、破壊力が上がるとかはいいんだけど、それ自体が大した面白味がなく、また、代償に欲望に忠実になるというのも、元々の性格と大差なく面白くない。最初から欲望に忠実な男であった方が、主人公としては魅力的だったろうに…。そういう意味でも登場人物はまったくダメ。こんなツマラナイ主人公は滅多にいない。

 またご都合主義で、敵情視察に行った主人公と姫様が敵の軍勢に囲まれた際も、無双の力で攻めてくる主人公らに対し、近距離戦しか挑まず結果取り逃がすとか馬鹿じゃないのかと。敵を捕まえるのに手段を選ばずに、あろう事か逃がすとか無能の極みでしょ。驕り以前の問題。

 また、ライト系とはいえ、終盤の戦争に緊張感がなく、二万対二千という戦力差でも、勝つのが分かっているので盛り上がらない。視察で無双の力を使って逃げている過程があるので、どうせ今回もそういうのでなんとかなる、という見方になってしまい犠牲もなく勝利している印象。

 評価45点。読みやすくはあるけど、とにかく主人公に魅力が皆無。ご都合主義も多いので、戦記としてはいかがなものかと。戦記初心者ならいいのかなー…くらい。





●2014/12/04  → 「星海社FICTION・作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その5

 復帰してより、電撃文庫とかSダッシュ文庫とかは基本的に避けてます。あっち系は明らかに年齢層が低いだろうという作品と、良作が入り混じっててタイトルで判断つかないから博打になる確率が高い気がして…。

『アリス・エクス・マキナ01 愚者たちのマドリガル』

 適当買い。定価が1400円と高いのに評価が高かったから。

 高性能アンドロイド・通称アリスは、人間の少女と酷似した美しい容貌を持っている。その用途は様々で、失った家族の代わりとして、介護やベビーシッターなど労働力として、その他各方面で活躍していた。ちなみにお値段は平均1000万円で上は天井知らず。

 その人格プログラムを調節する「調律師」という仕事をしている主人公の元には、アリスのオーナーより様々な性格カスタマイズの依頼が舞い込んでくる。そんな彼の工房を訪れた一体のアリスは、15年前に別れた幼馴染と瓜二つだった。しかも、他人の空似にしては口調や行動など全てが似すぎている。

 そのアリス「ロザ」は幼馴染とどういう繋がりがあり、どんな目的でやってきたのか?…という話。作者いわく『SF恋愛ミステリ』。

 本作では複数の女性型アンドロイドが登場し、主人公は彼女らの抱える問題に関わり、手を差し伸べていく。主人公はアリスはあくまで商品、飯の種というスタンスだけど、基本優しいので何かと心配している。それぞれのアリス達のエピソードが温かくてよろしい。それに加えて、世間でのアリスの扱いや置かれた立場などの世界観も見せてくれるので話がとても分かりやすく丁寧。

 で、メインヒロインとなる幼馴染に似たロザ(黄色の服)は中盤からやってくるのだけど、なにゆえ幼馴染と瓜二つなのか、という部分をロザを通し、幼馴染との思い出に浸りながら、そして明かされていく…という流れ。

 温かい話ではあるんだけど、ぬるま湯みたいな「ほのぼのロボ子物語」とは違い、アリスという商品の用途が生々しい面もあるというのがちゃんと描かれている。例えば、所詮はロボットなので社会的地位ゼロとか、少女型で連想される使い方とか…、そういう世界に対しての安易な誤魔化しをせず、ちゃんと描写している部分に好感が持てる。内容は間違いなく大人しいし派手ではないけど、その分、安定感がピカイチ。ラストが切ないよね。

 あんまり話してもナンなので、点数から言えば…これは大当たり。95点。素晴らしい! 表紙と人物挿絵以外、本文には挿絵が一切ないのもよい。これ読んだら2巻読まずにはいられない。ずるい! でも2巻が出ててよかった!






●2014/11/19  → 「ヒーロー文庫・作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その4

 異世界で活躍系は色々と出ているようですが、これもそれ系。でも、ただの異世界無双は飽きられたのか、様々な亜種が出てきているようです。色々と探すのもいいんだろうけど、アタリハズレがデカイから冒険したくないな、と思う。

『こちら討伐クエスト斡旋窓口 1』

 新作適当買い。なんでも良かった。

 主人公君には<鑑定>という特殊スキルがあり、アイテム鑑定を始め、人物の能力を見たりもできる。それを生かしてクエストを探しに来た人の実力を見定め、よりよいクエストを紹介する仕事。相手のスキルが見れるから的確な紹介ができて評判がいい。

 彼は現代日本で生きてたが若くして事故死。転生という形で異世界に来たけど、ちゃんとそこで育ち、深く学んできたので、ありがちな俺様最強ではなく腕っぷしも特に強くもない。窓口として迷惑な客に頭を下げたり、仲間に親切だったり、後輩育成にも余念がない。ちゃんと苦労して努力して頑張っているという、とにかく好人物。むしろ、前世での現代日本の記憶で苦しむ時もある。

 窓口での業務を行う中で、様々な事情を持った冒険者に出会い、的確なアドバイスをする事で信頼を得ていく。そしてそれは田舎街から王都へと迎えられても、その姿勢は変わらず、そこでも多くの人と関わる事で事件に巻き込まれていく…という流れ。

 主人公が努力の人である事や、慎ましい接客態度に好感が持てる。それはいいんだけど、もちろん主人公君は戦う仕事ではないので、戦闘シーンなどがなく盛り上がりに欠ける。仕事を斡旋→結果という連続なので山場がない。また、そういう小エピソード集のような作品であるのに章分けもないので、いつまでも長々と山場がない話に終始する。弱点はそこ。強力な引きがないので2巻も読みたいという気にならない。

 また、表紙の子は自分の弟子ではあるけど、そもそも話的に女性キャラの登場に意味がない。あくまで冒険クエスト斡旋の仕事なので、相手が女性である理由がないのが悲しいところ。扉後のカラー挿絵で女キャラがたくさん登場しているが、全部客寄せパンダで悲しくなってくる。

 総評。主人公君は好感。しかしながら、読みやすいけど盛り上がらない小話集のようなもので、続巻がまったく気にならない話。クエスト斡旋以上でも以下でもない。まあ、60点くらいかなー。





●2014/11/11  → 「ヒーロー文庫・作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その3

 ノベルを離れている間にこういう異世界で無双する系統が山ほど増えていたようで、そういう事をまったく知らなかった当方としては、読むまで”そういうものだ”と分からなかったわけで…。

『チート薬師の異世界旅 1』

 新作適当買い。なんでも良かった。

 平凡な高校生である主人公君は、神みたいな存在から、ちょっと有利な能力で異世界に転生しないかと誘われてOK。剣と魔法のファンタジックな世界での人生が始まる。

 タイトルでもある薬師としての多大な能力と、類稀(たぐいまれ)な身体能力を貰ってスタートする強くてニューゲームのような生活は順風満帆。作る薬は高値で売れる。勉強せずに楽に金が稼げる。大した苦労もせず信頼を勝ち得ていく。
 そのうち、平原で倒れていた性格ツンツンのヒロイン(表紙)に出会って惚れて、彼女の旅に同行する形で各地を歩き、各地での仕事や事件を解決していく流れ。

 …これ、ただの実績報告書じゃね? 薬をいくつ作りました。相応に売れて生活費も稼げました。平原に出れば、少し強い魔物も簡単に倒せました。僕は強いので疲れもなく余裕でした。ヒロインに会いました。惚れたのでついて行く事にしました。僕は他人より優れているので充実した生活を送れています。…終始それ。

 物語というよりも、失敗のない自己満足やら虚栄心やら功名心などを満たす事だけが目的であり、ドラマティックな展開を期待する読み物ではない。だから、異常なまでに読書を選ぶタイプで、こういった欺瞞(ぎまん)を目的とした嗜好を望む人じゃないと面白く読めない作品であり、元よりそこにしか注力してない作り。異世界転生モノってみんなこうなのか?

 まあ、面白い人なら面白いんじゃないでしょうか。逆に、そういうモノに興味がない人にとっては物語として読むには辛いモノです。世界観はそれなりでしたが、そこかしこに「○○のアトリエ」的なゲームっぽい安易さを多用していたので、あくまで飾り程度で深みはない。

 ごめんね。30点。ラノベで物語を読みたかったけど、ラノベ表紙っぽい実績報告書だとは思わなかった。





●2014/11/03  → 「ガガガ文庫・作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その2

 久しぶりにノベルを色々と漁り、数々の作品を眺めて思ったのは、タイトルがやけにトゲトゲしいなぁ、という事。恋愛系にしろ中二系にしろ、タイトルの個性が強すぎてやりすぎなんじゃねーかと思う。そりゃあ目に付いた方が有利だろうけど、中身伴わなきゃ、その作者の作品敬遠するだけやん。

『GEΦグッドイーター』

 作者買い。アニメの「GJ部」が面白かったから。

 表紙絵の通りファンタジーモノ。元勇者、元魔王、元アサシンなどの女の子が、ダンジョンにて美味いモンスターを倒して食う、というチーム「グッドイーター」を結成し、それに付き合わされた主人公君との日常。ほんわか系。四コマ漫画的ノベルで、4Pで1話のエピソードが36編入っている。

 強いモンスター程美味い法則で、ドラゴンの肉は美味いだの、コカトリスはニワトリとヘビの体を持つからどっちかの味がするだろうとか、メインとなるのは飯を食う事。また、倒した敵は必ず食べなければならないというチームの掟があり、石モンスターを倒してしまって食うのか…などと悩んだりもする。ちなみに戦闘シーンなどはなく、3分で倒したなどの結果のみ。

 また、登場キャラとのゆるい会話や日常についてなどが単純明快に繰り返されるため、とても読み易く、とっつきやすいのが売り。ただ、同作者作品「GJ部」と似通った登場人物を思わせる。年上(もしくは力関係が上)な女の子達と大人しい主人公の少年という構図が至極似ており、実はやっている事は大差ないのではとも思える。

 総評。

 あくまで、なごやかな空気を楽しむ作品であり、物語を期待するべきではない前提。逆に進展がなくて同じような事しかしてない印象も強い。そういう意味では人を選ぶ作品。GJ部のようにアニメで流して見るならいいけど期待して見るものでもない作風なのだと思う。…点数はつけないでおく。





●2014/11/01  → 「早川書房・作品紹介ページ」
 『よーし、久しぶりにノベル読むぞー』 その1

 最近スマホでダラダラ時間潰す目的のないネット遊泳に飽きてしまい、活字を所望していたワタクシ。昔のようにラノベをばりばり読む気はないんだけど、ちょこちょこ読もうかと再開しました。

『楽園追放』

 アニメ作品として発表されている本作のノベライズ版で、内容はほぼそのままのようです。

 あらすじをバッサリ言うと、大災害により、人類は肉体を捨てて電子化し、病気も寿命も資源枯渇も解決した近未来。主人公アンジェラさん(表紙)はそこでの犯罪捜査官。

 システムが統括するその世界で、それに感知しない「新天地を目指そう!」という勧誘告知が流れる。しかもそれは、大災害によりメチャメチャになって久しい地上からのハッキングだそうなのです。

 最高責任者より、お前ら調べてこいや!という命令で、肉体を得て地上というリアルワールドに降り立つ犯罪捜査官アンジェラさん。そこで体験する事件という話ですな。

 …で、どういうテーマなのかというと、「自由」というモノへの真実と価値でしょうか。

 アンジェラさんの故郷・宇宙ステーションでは電子世界が当然で、職務で功績を得るほどメモリが増やせる。つまり、ハードディスクの容量を増やせるようなもので、大きければ大きいほど、土地情報や知識を詰め込める。つまり出世する事で選択の自由が広くなるという事です。

 彼女にとってそれは当然の事だったのだけど、いざ地上に降りてみると、そこで暮らしている現地の地球人は、文明も崩壊しているというのに逞しく、縛りもなく生きている。出世で増やせる容量などなく自由に暮らしている。それが本当の自由じゃないのか、と悩みます。そしてハッキング行為をした犯人に出会い…、という流れです。

 そういう話でして、物語はかなりしっかりした作りになってますし、アンジェラさんも変な萌えとかなく、正しい主人公で好感が持てました。ちなみに彼女は一応成人女性らしいですが、手柄を独り占めしたくて、地上用の肉体が完成する時間を短縮して先行しちゃったので、体が未成熟なままの姿をしているそうです。そういうせっかちさが地上での不満へとうまく誘導してあり、無理なくイベントが起きる部分も良好です。

 では、総評。

 非常に面白く読めましたし、実にまとまりがあった。長さ的にも長すぎず短すぎずでちょうどよかったです。表紙以外に挿絵がまったくないのにも、内容で勝負という意味合いで好感触でした。うむ、面白かったね。久しぶりに読んだノベルが当たりだったのは嬉しい。点数は80点くらいかね。









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